セレクションにのぞむにあたっての心構え

今回は、セレクションについてのお話です。
現在(2021年)、新型コロナウイルスの影響により、ほぼ全てのサッカー活動が休止になっており、セレクションが行われるのかどうか、いつ頃行われるのかなど、不安に思っていらっしゃる方が多いと思います。セレクションを行うチーム側も、いつ行えるのか、どのように行えるのかと、情勢を踏まえて模索中だと思います。通常であれば、はっきりする時期でもあり、情報も出たりすると思いますが、活動が行えない以上、いかなる見る機会も、見てもらう機会もつくれないのが現状です。そんな中、動画でセレクションというような形式も、今後は増えてくるかもしれません。現在の私の立場では、各チームの詳細までは分かりませんが、これまで携わってきた中での、セレクション(スカウティングなども含む)について、どのような見方をしていたのかとか、どのようなことを意識してのぞめばいいか、そして、セレクション後にどのように取り組んでいくべきかなどについて、ご参考までにお話ができればと思います。
 
川崎フロンターレのジュニアユースやスペシャルクラスやエリートクラス、そして、神奈川県トレセンや川崎市トレセンなど、10年以上育成年代に携わってきたからこその経験と、そこから見えたこと。
そして、その後、川崎フロンターレと名古屋グランパスのトップチームでプロの選手たちも見ていたので、だからこそ逆算で見えていることがありますので、それらを踏まえ、下記6つの項目についてお話しいたします。
 
①目立つ、とは。
②自分の特徴を出す。
③普段やれていないことに、無理にチャレンジしない。
④自分ではどうにもできない要素もある。
⑤受からなかったからといって、ダメだというわけではない。受かったからといって、良いというわけでもない。
⑥何が大切なのか。
 
 
【セレクションにのぞむにあたっての心構え】
①目立つ、とは。
・セレクションにおいては、目立つことが大切です。
・目立つとは、「プレーで目立つ」ということです。あくまでも、プレーです。グランドで何ができるか、です。
・セレクションだと、アピールしなきゃと思うものですが、結局は、「プレーで目立つ=プレーで何ができるか」が大切なのです。
 
 
②自分の特徴を出す。
・プレーで目立つ=プレーで何ができるかというのは、「自分の特徴を出す」ということです。
・自分の特徴は何ですか?→得点につながるパスを出せる、スルーパスを通せる、点が取れる、相手をドリブルで抜ける、相手にとられないようにキープできる、視野が広い、ボールがない時もボールに関わり続けられる、常に相手と駆け引きしている、ミスが少ない、判断が的確、周りとプレーができる、コーチングできる、献身的に守備ができる、相手からボールを奪える、球際が強い、ゴール前で体をはって守れる、ヘディングが強い、シュートを決めさせない、などなど。
・これらが全てではありませんが、大事なことは「自分の特徴を出す」ことで目立つということです。
 
 
③普段やれていないことに、無理にチャレンジしない。
・受かるためにどうするか、ということで、普段できていないプレーなんだけれど、受かるためにはやった方がいいだろうということを意識してセレクションにのぞむ、ということはあまりお勧めできません。
・なぜなら、それを意識しすぎて、本来の自分のプレーができない、特徴を出しきれないということが往々にしてあるからです。
・セレクションというのは、大勢の人数が集まります。その中においては、プレーできる時間が十分にあるわけではありません。非常に限られた時間の中で、自分の良さを出さなければ目に留まりません。そういう意味においては、迷いながらプレーするのではなく、思い切って、自信をもって、自分らしくプレーできた方が絶対に良いです。
・自信をもってやっているのか、迷いながらやっているのかというのは、一目でわかります。もちろん、自信をもってやっている方が、良い評価につながると思います(合否は別として)。
 
 
④自分ではどうにもできない要素もある。
・これはどういうことかというと、例えば、小学生年代でのセレクションでも、中学生年代でのセレクションでも(すべてのカテゴリーにも当てはまると思いますが)、そのチームにはすでにベースとなるチームがあり、そのチームの選手たちも何人かそのまま昇格してきたり、残っていたりということがほとんどです。
・そうすると、チームによっては、同じポジションの選手がすでに所属しているという場合があります。ただ、サッカーの場合は、ゴールキーパー以外はポジションを変えてやれるので一概には言えませんが、こういった事情があることも事実です。(ゴールキーパー⇔フィールドプレーヤー、というのも、なくはないです)
・また、各チームによっての選考基準も、細部まで全く同じというわけではないので、このチームでは受からなかったけど、あのチームでは受かった、というようなことはよくあります。もちろん、それぞれのチームのレベルにもよりますが。
・そして、セレクションを行う場合はどこのチームもそうですが、チーム編成人数に上限もあるので、その部分で加入できないという場合もあります。
 
 
⑤受からなかったからといって、ダメだというわけではない。受かったからといって、良いというわけでもない。
・ここまでお話してきたように、自分でなんとかできる部分だけではなく、自分ではどうにもできない要素も多くあります。
・また、小学生年代や、中学生年代は、成長の早い遅いということが、はっきりと出る年代です。誕生月による成長の度合いにも、もちろん違いがあります。
・ですから、①で取り上げた、「目立つ」という部分については、「速い、強い、大きい」ということが、非常に目につくのは事実です。その部分で受かる選手ももちろんいるでしょうし、逆もしかりです。
・しかし、10年以上育成年代に携わってきた私の経験から言いますと、極端に言えば、この年代のセレクションの合否や、チーム内での序列はそんなには関係ありません。セレクションに受かったからといって、将来の目標であるプロ選手になれると決まったわけではありません。たとえプロ選手になれたからといって、活躍することが約束されたわけでもありません。もちろん、そのままプロになり、活躍する選手もいるのは事実としてあります。
・しかしその裏で、逆転現象が多いのも事実としてあります。あの頃セレクションにも落ち、まったく選抜にも選ばれてこなかった無名の選手が、急に頭角を表してきてプロになったり、プロで活躍したり、日本代表にまで選出されるということも現実としてあります。
・また、難関のセレクションを突破してきた選手たちの集まりなので、それまでよりも、もう一段、もう二段くらい上のレベルでの競争になります。その時に、その中での競争で、続けてやっていけるのかどうか。
・合格がゴールではありません。実は、合格してからの方が大変な部分の方が多くなることだってあるのです。
・そういった厳しい環境下においても、前を向いて、時には落ち込むことはあってもまた前を向いて、やり続ける強さがあれば、さらに伸びていくと思いますが、これは、言葉では簡単ですが、実際に行うとなると、とても大変なことです。
・特に、小学生、中学生年代では、成長の個人差が大きいので、どうしようもなくやれないことだってあるのです。もちろん、その中でどうすればできるようになるのかというように、考え、工夫し、やり続けることができれば伸びていきます。ですが、大人が思うほど簡単なことではないと思います。自分が、小学生、中学生のころを思い返した時、成長期でどうしようもないくらいかなわないと感じた相手に対して、周りは頑張れというものの、そうはいっても…と感じたことはなかったですか?そう考えると、想像しやすいかと思います。
・そういった集団の中で自信を失う選手もいます。もちろんそれでも向かっていく選手もいます。
・チームに入ることが目的ではありません。入ってどのように取り組むかが大事なのです。だとすれば、自分が入りたいと思っていたレベルの高いチームよりも、レベルは落ちるかもしれないけれど、もちろん競争はあるけれど、試合に出れる可能性の高いチームでやっていることの方が、自信をもって、のびのびとできて、伸びていくことだってあるのです。
・受からなかったからといって、ダメだというわけではない。受かったからといって、良いというわけでもない。こういった現実をずっと見てきたからこそ、言えるのです。
 
 
⑥何が大切なのか。
・では、こういった様々な状況の中で、この年代において何が大切なのか。それは、「基本をしっかり積み上げていく」。ただそれだけです。
・どのレベル、どこのチームでやろうとも、大切な基本をしっかりと積み上げていく。これが非常に重要です。
・想像してください。例えば小学6年生。技術レベルが同じ選手がいて、体の成長の早いA君と、体の成長の遅いB君だと、この時点で目立つのはA君です。しかし、その後同じようにトレーニングを行い、同じように技術レベルが上がったとします。高校生になり、B君は体の成長が遅かっただけなので後で追いついてきます、もしくは追い抜くことだってあります。そうした時にどうでしょうか?逆転現象が起きます。そういうことがよく起こるのです。ですから、決して焦らないでください。逆に言えば、今できていると思っていても、成長が早くてできているのであれば、そこをしっかりと受け止めて、基本を雑にすることなく、しっかりと積み上げていくようにしてください。
・小学生年代や中学生年代では、成長が早くても、成長が遅くても、大切なのは、その後のサッカー選手として大切な基本を、地道に積み上げていくことなのです。磨き続けていくことなのです。
・私は、指導者1年目や2年目ではそのことがわかりませんでした。親御さんも、特に自分の子供が1人目であると、なかなかその先までは見えないと思います。現状に、不安や焦りを感じることが多いのではないでしょうか。
・しかし、私は何年も指導者を続けてきたことで、その後の成長という部分が見えましたし、トップチームの選手たちも見ることができたので、それまでに何を獲得しておくことが大切なのかというのもよくわかりました。
・今を焦らない。焦ると子供にそれが伝わってしまう。そうすると、子供が敏感にそれを感じ、大人が焦らないようにプレーするようになる。負の意味において、大人が安心するプレーを選んでしまうようになる。それでは基本をおろそかにすることもあるし、特徴も出せなくなるし、雑になってしまうし、考えなくなってしまう。
・ですので、セレクションを受験する時に考えておいてほしいのは、高いレベルを目指しつつも、長い目で見てあげてほしいです。
・とにかく今は、将来にとって大切な基本を、丁寧にしっかりと積み上げていくようにしてください。
 
 
MORIFOOTBALL ACADEMY
代表 森 一哉
 
◎公式SNSアカウント
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◎主な活動
・エリート育成クラス 横浜中川校
・エリート育成クラス 茅ケ崎校
・エリート育成クラス湘南校
・パーソナルレッスン
・出張サッカークリニック
・1dayスキルアップクリニック
・指導者講習会  など